皆さんが日々、会社や自宅、スマホなどで屋外からインターネットに接続し、様々なウェブサイトにアクセスしたり、ウェブサービスを利用したり、映画などのオンデマンド配信やオンラインゲームを楽しんだりと、今やインターネットは社会のインフラとしてなくてはならない存在になっています。
これらの便利なインターネットはどの様な仕組みで成り立っており、どの様に接続されているのかについて、部分的にしか理解できていなかったり、まったく知らないまま利用している人が大半だと思います。
ただ、インターネットの大まかな仕組み自体はそれほど難しいものではなく、また、主要なポイントさえ理解しておけば、プライベートや仕事におけるインターネットにまつわるトラブルが発生した場合や、職場や自宅で新しくインターネット回線を敷設しないといけなくなった場合などでも、適切に対応することができるようになります。
よって、今回は、IT初心者向けの記事として、「パソコンからインターネットに繋がる仕組み」について、ネットワーク用語の解説も踏まえながら紹介していきます。
インターネット回線事業者とインターネットサービスプロバイダーの役割
インターネット回線を自宅や職場に新しく新設する場合、まず申し込みをしないといけないのが、「インターネット回線事業者」と「インターネットサービスプロバイダー」です。
この「インターネット回線事業者」と「インターネットサービスプロバイダー」は、インターネットに詳しくない人や、非IT職種の人にとっては、両者を同じものとして認識していたり、両者の違いやそれぞれの役割を混同しているケースも多く見受けられます。
まずは、この両者の違いを整理していきましょう。
インターネット回線事業者とは
最も有名、且つシェアの高い企業で言えば、「NTT東日本」と「NTT西日本」です。
インターネット回線において、近年は光回線が主流であり、光回線とは、複数の光ファイバーを束ねて1本のケーブルにしたものを電柱などを介して市中に張り巡らし、信号のやり取りをしている通信回線です。
その光回線のなかでも、NTTが提供している光回線を「フレッツ光」と呼びます。
NTTの「フレッツ光」に申し込みをすると、自宅や会社の近辺にある電柱に光ケーブルが敷設されていれば、そのケーブルを分岐させて自宅や会社の建物まで引き込みます。
電柱から建物までの光ケーブルの引き込み作業を「屋外工事」、建物まで引き込まれたケーブルを建物内の所定の位置まで通して、光終端装置を設置するとこまでを「宅内工事」と呼びます。
インターネット回線事業者は屋外工事と宅内工事を実施して、光終端装置(ONU)と呼ばれる機械を宅内に設置するところまでが作業範疇です。
前述した「フレッツ光」を提供しているのはNTTですが、他にもインターネット回線を提供している企業はあります。
電力系企業はその地域毎に独自の回線網を持っており、その回線を提供しているケースや、ケーブルテレビ系の企業ではケーブルテレビ用で敷設しているケーブルにインターネット用の信号も載せて、ケーブルテレビ契約者にインターネット回線として提供していたりします。
また、通信速度が速いと評判な「NURO光」はSONY系列の企業が提供しており、NTTが国内に敷設した光ケーブルのうち、余剰分としてNTTが使用していない光ケーブルを、NURO光専用としてNTTから借りて顧客に提供しています。
これは、前述した専用光ケーブルのお陰なのと、後発で次世代の通信規格を使用してネットワークを構築していることによる効果です。
また、戸建なので直接光ケーブルを引き込めていることも大きいです。
導入した直後の私が感動のあまり投稿したツイートも紹介しておきます!驚きです・・・。
ようやくNURO光が開通しました
確かに速い・・・
ダウンロードは日や時間によって700Mbps~850Mbpsぐらい
やっぱ次世代規格ってのは伊達じゃないですね#NURO光 pic.twitter.com/JSUYOSSQ3i— ITエンジニアの備忘録的技術ブログ【仮】のなかの人 (@DepthbombM) December 20, 2020
宅内工事では、大体の建物でも予め電話線が屋外から宅内の、戸建住宅ではリビングや、オフィス用のビルであれば建物の配電盤などに、既に引き込まれている事が多いので、その場合はその引き込まれている電話線が通してある宅内配管を通じて、電話線の差込口が設置されている場所まで光ケーブルを通します。
IT初心者の人が混乱するケースの一つとしてよくあるのは、ONUとルーターの違いです。
ONUとは、光回線終端装置とも呼び、宅内に引き込まれた光ケーブルの信号をパソコンなどで使用するネットワーク用の信号に変換する役割があります。
ただ、純粋なONUはその機能しか持ち合わせておらず、ONUのみでインターネットに繋ごうとする場合は、LANケーブルをONUとパソコンに直結して、パソコン側で「PPPoE」と呼ばれる設定をする必要があります。
また、その際にインターネットに接続できるのは、LANケーブルでONUと直結している端末一台だけです。
※下部の図①
パソコンやスマホなどの複数の端末でインターネットに接続しようとした場合は、「ルーター」と呼ばれる機器も必要になります。
「ルーター」では、PPPoEでインターネットと常時接続する機能を持ち、ルーターを介する事で、複数の端末が同時にインターネットに接続できる機能も提供しています。
また、最近のルーターはたいてい無線LAN機能も持っており、無線LAN機能があればスマホやタブレットなどのデバイスも、ルーターを介してインターネットに接続させることができます。
※下部の図②
NTTのフレッツ光を申し込むと、通常はONUしか提供されないので、ルーターを自身で購入して設置する必要があります。
前述した様に、NTT以外にも光回線を提供するインターネット回線事業者は存在し、その会社によってはONUとルーターが一体型となった機器を提供してくれます。
また、後述する「プロバイダー」に申し込んだ際に、プロバイダーによってはルーターを提供してくれるプロバイダーもあります。
・「フレッツ光」はNTTの光回線の商品名
・光回線を引き込むには屋外工事と宅内工事が必要
・インターネットに複数の端末を繋げるにはルーターが必要
インターネット接続にはプロバイダー契約も必要
インターネットに接続するには、まずは物理的なインターネット用の回線が必要になります。
よって、NTT東日本やNTT西日本に連絡して、フレッツ光を申し込み、自宅や会社に光ケーブルを引き込みます。
それだけでインターネットに接続できそうに思えますが、それだけではインターネットには繋がりません。
「インターネットサービスプロバイダー」と呼ばれるインターネット接続事業者への申し込みも必要になります。
プロバイダーと略されることが多いので、当記事でも「プロバイダー」と呼称します。
プロバイダーのサービスを提供している企業は国内に数百社以上存在すると言われており、最大手では、プロバイダーサービスの「OCN」を提供する「NTTコミュニケーションズ」があり、他の有名なプロバイダーサービスでは、「@nifty」「plala」「BIGLOBE」「ASAHIネット」「So-net」などがあります。
そもそも「インターネットサービスプロバイダー」はなぜ必要なのでしょうか?
インターネットに接続する為には、インターネットの世界における「住所」の役割である「IPアドレス」を持つ必要があります。
例えば、www.yahoo.co.jp や、www.google.com といったウェブサービスでは、そのサービスごとに「IPアドレス」と呼ばれる、ネットワーク上の住所を持っており、私たちのパソコンやスマホはその住所までアクセスしに行きます。
インターネットの世界では、行先の住所と共に、出発地点の住所も必ず必要です。
出発地点の住所を持っていないと、www.yahoo.co.jp などのウェブサービスにアクセスしに行った通信の戻り先が存在しないことになり、通信が戻ってこれないということは、そのウェブサービスとの通信に失敗したということになります。
プロバイダーは、契約した顧客に対して、その住所の役割である「IPアドレス」を付与してくれます。
プロバイダーに申し込むと、ユーザーIDやパスワードなどの認証情報が送られてきます。
その情報を自宅のルーターに設定することで、「PPPoE」の技術でユーザー認証を実施し、ルーターではインターネット上の住所である「IPアドレス」を利用できるようになり、そのルーターを介してインターネットへのアクセスが出来るようになります。
この「IPアドレスの付与」という機能が、プロバイダーの最も重要な役割です。
それ以外にも以下の様なサービスを各社が独自に提供しています。
・専用メールアドレスの発行
・ウェブメールサービスの提供
・セキュリティソフトの提供
・オリジナルホームページ公開環境の提供 などなど
ここまでの説明では、インターネットに接続するには、回線事業者へ申し込みつつ、プロバイダーへの申し込みの両方が必要だということがわかります。
ただ、物理的なインターネット回線の申し込みとプロバイダーサービスの申し込みをそれぞれ異なる会社に行うのは面倒だったりします。
この「インターネット回線」と「プロバイダーサービス」を併せて提供している企業も幾つかあり、その具体例としては以下があります。
コミュファ光(中部テレコミュニケーション)
auひかり(KDDI)
eo光(オプテージ)
NTT東西がプロバイダーサービスを提供しない理由
だったら、これらの企業の様に、NTT東日本やNTT西日本もインターネット回線と併せてプロバイダーサービスも提供してくれれば、インターネット回線としてフレッツを選択した場合にプロバイダーを他社サービスから選定する手間が省けて便利だと思われますが、NTT東日本やNTT西日本はプロバイダーサービスは絶対に提供しません。
それはなぜでしょうか?
いったん会社名も整理しましょう。
NTTは略称で、正確には様々なグループ会社を取りまとめる、持ち株会社の「日本電信電話株式会社」が正式な会社名です。
英語表記では「NIPPON TELEGRAPH AND TELEPHONE CORPORATION」となり、略して「NTT」です。
この「日本電信電話株式会社」は元々国営企業であり、民営化した現在であっても、株式の3分の1は国(正確には財務大臣)が保有しており、外国人に対する株式保有率の制限があったり、役員人事の規制や役員の選任や解任では総務省の許可が必要など、一般の民営企業には無い制約や規制が適用され、それらは所謂「NTT法」で定められています。
また、その配下には、地域会社である「NTT東日本(東日本電信電話株式会社)」と「NTT西日本(西日本電信電話株式会社)」があります。
この二社が電話回線の敷設、及びインターネット回線の敷設事業を行っており、この二社についても、親会社である日本電信電話株式会社よりは規制は少ないが、NTT法による規制の影響下にあります。
NTTと類似した元国営企業では、旧国鉄のJRがあります。
JRも企業としては規模が巨大過ぎて、そのままの規模で民営化した場合は、鉄道業界に対する民間企業の参入が阻害されてしまう、また、当時のアメリカからの外圧なども有り、北海道、東日本、東海、西日本、四国、九州の6つの地域で分社しました。※貨物などのように地域会社以外の分社も存在しましたが。
NTTの場合は、東と西で地域会社に大きく分社しますが、細かい地域ごとに分社することはせず、その代わり、事業内容ごとに分社しました。
分社したグループ企業のなかで、国際電話などの長距離通信サービスや電話の付加サービスなどを提供する目的で分社したのが、「エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社」です。
我々IT技術者間では「NTTコム」や「Nコム」などと略されて呼称されます。
NTT東やNTT西は特殊会社として、NTT法のもとで国からの規制を受けますが、このNTTコムは純粋な民間企業として分社しており、特殊会社にはあたりません。
この「NTTコム」がインターネットサービスプロバイダー事業も提供しています。
もし、NTT東西がプロバイダー事業を提供すれば、他社と比べ圧倒的に優位なのは間違い無いのですが、それでは、他のプロバイダー事業者の大半はNTTに太刀打ちできずに、参入を断念し、業界の活性化には繋がりません。
公営企業を民営化した意味が無くなります。
これらの事情や経緯により、NTT東西がプロバイダーサービスを提供することは許されていないのです。
・インターネットに接続するにはプロバイダー契約が不可欠
・プロバイダーの主な役割はユーザー認証をして、契約者にIPアドレスを割り当てる
・多くの企業がプロバイダー事業に参入し、様々な独自サービスを提供している
・NTT東西が自らプロバイダーサービスを提供することは無い
PPPoEは古くて遅くIPoEは新しくて速い
前項では、インターネットに接続するために、PPPoEでプロバイダーから認証されて、IPアドレスを付与してもらう必要があると記載しましたが、この「PPPoE」は、電話回線を使ってインターネットに接続していた頃に使われていた認証技術がベースとして使われております。
PPPoEでは、NTT基地局内に設置されている「網終端装置」を介して契約プロバイダーと接続してインターネットに出るのですが、近年はこの「網終端装置」が、増大する通信量を捌き切れずボトルネックになっており、インターネットの通信が非常に遅くなる現象が頻発しております。
例えば、自宅でインターネットを利用する場合に、平日の日中は問題のない通信速度でインターネットを使用できるが、夜間になると極端に通信速度が遅くなるといった場合には、この「網終端装置」が渋滞して遅延が発生している可能性が大きいです。
「IPoE」とはなんだ?
その為、最近では「PPPoE」ではなく「IPoE」と呼ばれる接続方式が利用されるようになってきています。
「IPoE」では、NTT基地局内の「網終端装置」を経由しません。
また、インターネット黎明期から使われている「IPv4」ベースのIPアドレス体系ではなく、新しく制定された「IPv6」ベースのIPアドレス体系で通信を行います。
正確には、NTT基地局から「VNE事業者」と呼ばれる「IPv4」と「IPv6」のIPアドレスを変換する通信業者を介してインターネットに接続され、プロバイダーはその「VNE事業者」と連携し、契約者の認証のみ行います。
以下の構成図を参考にしてください。
上記の説明だけを見る限り、「IPoE」方式のメリットだけが強調されていますが、「IPoE」方式のなかでも、更に幾つか種類があり、その種類によって特定の利用方法に対する制約が発生する場合があります。
通信技術 | 4rd/SAM | MAP-E | DS-Lite |
IP割当場所 | 自宅ルータ | 自宅ルータ | プロバイダ |
ポート開放 | 可能 | 可能 | 不可 |
プロバイダーよって連携する「VNE事業者」は異なり、それによって使用できる通信技術が異なります。
特に「DS-Lite」では、ポート番号を指定して自端末まで直接通信を通す「ポート開放」ができません。
よくあるケースでは、オンラインゲームなどで問題になる場合があります。
「IPoE」を申し込む場合は、どの通信技術が使われるかについても予め確認しておくこともおススメします。
スマートフォンがインターネットに繋がる仕組み
皆さんが持っているスマートフォンは当たり前の様にインターネットに接続することができますが、スマートフォンがインターネットに接続できるのも、パソコンと同じように、スマートフォンごとにIPアドレスを払い出して割り当てられているからです。
スマートフォンは電波に乗せて音声通話やインターネットに送るデータを転送しますが、その電波は基地局にたどり着いた後に、音声通話データとインターネット用のデータに分けられて、別々の経路を辿ります。
インターネット用のデータは、基地局からインターネットに流れていきます。
スマートフォンでは、音声通話データとインターネット用のデータとは別の経路を辿ります。
その為、Wi-Fiに繋がないとインターネット接続はできないが、音声通話はできるといった使い方もできます。
ドコモやau、ソフトバンクなどでは、インターネット接続サービス料金として、ドコモであれば「spモード」、auであれば「LTE NET」といったものがあり、ご自身の請求書を見ると300円がその料金として毎月請求されています。
これらのインターネット接続サービスはスマートフォンやタブレットなどをキャリアで契約する場合は必須の場合が多く、あまり意識することは無いかも知れませんが、これらのサービスがプロバイダーと同じものと考えて問題ありません。
国境を越えてインターネットが世界中に繋がる仕組み
前項では、インターネットを利用する為に不可欠なインターネット回線とプロバイダーの役割や仕組みについて紹介しましたが、当項では、インターネットの一つの魅力である、「国境を越えてインターネットが世界中に繋がる仕組み」をざっくりと紹介していきます。
各国や様々な地域を繋ぐ光ケーブル網が存在
日本国内でインターネットを利用する場合は、一般的には国内向けのウェブサイトやウェブサービスにアクセスすることが大半だと思います。
それは我々日本人は日本語を母国語とし、世界の共通言語である英語があまり得意ではないことにも起因しています。
ただ、インターネットの魅力の一つとしては、パソコンやスマートフォンから日本国内のウェブサイトやウェブサービスだけではなく、世界中のウェブサイトやウェブサービスにアクセスすることができる点です。
人が外国に旅行するには、一般的にはパスポートが必要になり、厳重な入国チェックを税関で実施したうえで初めてその国に入国することができますが、インターネットの世界に税関はありません。
パスポートも存在しません。
母国語が英語や、第二言語として英語が使われる国や地域では、日本人が持つイメージより更にインターネットは国境を越えたボーダーレスな存在です。
普段、皆さんはあまり意識することは無いかも知れませんが、このインターネットにおけるボーダーレスな通信網を実現できているのは、その通信網の大半で物理的な通信ケーブルが張り巡らされているからです。
スマートフォンなどの移動通信網はあくまで末端のデバイスから最寄りの基地局までの通信で使用されるだけであり、そこから先は物理的な通信ケーブルを介して通信を行います。
日本国内であれば、大半が陸地で繋がっており、北海道や四国、九州、沖縄などの本州から分離している地域であっても、その地域を繋ぐ大橋や海底トンネルなどもあり、また隔てる海も距離はそれほど離れている訳ではない為、「物理的な通信ケーブルで繋がっている」ことはイメージし易いかと思います。
ただ、海外の様々な国や地域に対しても、同様に「物理的な通信ケーブルで繋がっている」という事実はあまり意識することは無いのではないかと思います。
海底ケーブルの通信網
実は、日本とアメリカは、太平洋の海底にまっすぐひかれた通信ケーブルで繋がっていると聞いたら驚くのではないでしょうか。
以下の図は日本を中心にして、どの様に海底ケーブルが張り巡らされているかを視覚化した図です。
図版引用:https://www.submarinecablemap.com/
この図はあくまで海底ケーブルのみですが、陸地でも同様に通信ケーブルは張り巡らされています。
日本は全ての国と通信ケーブルが直接1対1で繋がっている訳ではなく、直接繋がっている国は世界中の国の一部です。
ただ、各国ごとに隣接する国や地域とは直接繋がっており、それらを経由していくことで、世界中の国や地域にインターネットを介してアクセスすることができます。
余談ですが、昔は海外とのリアルタイムな通信をする場合、通信衛星を介してやり取りをすることが一般的でした。
ニュース番組のなかで、海外とリアルタイムにやり取りをする場面では、相手の音声や映像がワンテンポやツーテンポほど遅れてやり取りをしていたのを記憶している人も多いかと思います。
今では、こういった海外とのリアルタイムでの通信は殆どが海底ケーブルを介した通信です。
海底ケーブルは光ケーブルが使用されており通信速度も速く、また、地上と通信衛星とは非常に距離が離れており、海底ケーブルで直接通信先と繋げた場合と比較すると、海底ケーブルで繋いだ方が圧倒的に通信の発生する距離が短くすみます。
その結果、海外とのリアルタイムでの通信においても、昔ほど遅延が発生することは少なくなりました。
URLやメールアドレスの仕組み
前項までは、主にインターネットにおける、物理的な繋がる仕組みを紹介してきました。
当項では、インターネットの世界でとても重要で、ウェブサイトなどの宛先として使われる「URL」やEメールで使用される「メールアドレス」について紹介していきます。
インターネットの住所は「IPアドレス」
インターネットの世界、正確には「IP」の技術では、通信元の所在地として「IPアドレス」という仕組みが使われます。
これは名前の通り、”IP”の”アドレス(所在地)”です。
皆さんが普段見ているウェブサイトや、勤めている会社のコーポレートサイトなどの、すべてのウェブサイトやウェブサービスはIPアドレスを持ちます。
IPアドレスは、1から255までの数字を4つで組み合わせて使用します。
実例としては、例えば皆さんがよく御存知のYahooジャパンのURLで使われているドメインの「www.yahoo.co.jp」のIPアドレスは「182.22.25.252」です。※Yahooの様な大規模なウェブサイトはIPアドレスも一つだけではなく複数使用しているため、上記のアドレスはあくまで一例です。
パソコンからYahooにアクセスする場合でも、スマホからアクセスする場合でも、このIPアドレスを目的地として通信を行います。
尚、IPアドレスは内部的には32桁の2進数を使用し、人が見てわかりやすいように、10進数に変換して使用します。
IPアドレスは大きく二種類に分類される
この「IPアドレス」ですが、大きく分けると「グローバルIPアドレス」と「プライベートIPアドレス」の二種類が存在します。
上項で紹介したYahooジャパンのIPアドレスは「グローバルIPアドレス」です。
では、この二種類のIPアドレスの違いも知っておきましょう。
グローバルIPアドレスとは
簡単に言えば、
です。
グローバルIPアドレスは発行できる個数に限りがあります。
具体的には上記で説明した様に、32桁の2進数を使用していることから、2の32乗した43億個が上限です。
このIPアドレスは、インターネット上の住所の役割がある為、同じ番号を異なる場所や機器に対して同時に使用することはできません。
また、限りある資源でもある為、自分専用、又は自社専用のグローバルIPアドレスを使用した場合は、契約しているプロバイダーなどに依頼をして、有償でIPアドレスを割り当ててもらう必要があります。
プライベートIPアドレスとは
簡単に言えば、
です。
2進数+32桁の組み合わせで使用されるIPアドレスにおいて、特定の範囲の組み合わせは、インターネット上では使用できず、プライベートIPアドレス専用のIPアドレスとして決められており、そのプライベートIPアドレス用の組み合わせは、会社内のネットワークや個人の自宅内のネットワークなどの、インターネット以外のネットワークでは自由に使用できます。
家庭用のルーターでは、その配下で接続しているパソコンやタブレットなどの端末に対して、プライベートIPアドレスを自動的に割り当ててくれる「DHCP」と言う機能を利用してネットワークに接続するのが一般的ですか、その際によく使われるプライベートIPアドレスの例としては
などです。
プロバイダーが割り当てたIPアドレスを他の契約者と共有
前項の「グローバルIPアドレス」の説明では、43億個まで使用できると説明しました。
43億個と聞くと、一見膨大な個数の様に感じますが、実際はギリギリでやりくりしています。
インターネットに繋ぐには必ずIPアドレスを一つ使用します。
最近では当たり前のように使用されているスマートフォンでも、インターネットに接続する為には、当然IPアドレスが必要になります。
このスマートフォンだけでも世界で見ると膨大な数が存在し、それ以外にも、従来からあるパソコンなどインターネットに接続する機器や端末は無数に存在します。
その為、インターネットに接続する端末ごとに、専用のIPアドレスを一つ一つ割り当てていたら、すぐにIPアドレスは足りなくなります。
一般的には、家庭で使用するインターネットでも、企業で使用するインターネットでも、プロバイダーと契約してインターネットに接続しております。
プロバイダーは、前項で説明したように、契約している顧客に対してIPアドレスを割り当てて、インターネットに接続できるようにしていますが、そのIPアドレスは、実は契約している顧客間で共用して使用しています。
この割り当てたIPアドレスが変更されるタイミングは、プロバイダーによっては差があり、ほぼ固定IPアドレスの様に、一度割り当てられたらなかなか変更されないプロバイダーもあれば、日毎に変わるプロバイダーもあります。
因みに、PPPoEでプロバイダーとの認証処理をしているルーターが再起動すると、併せてIPアドレスも再割り当てされる場合が多いです。
インターネットでサービスを提供する場合は固定IPアドレス
インターネットに繋ぐ場合、一般的にはプロバイダーから動的に割り当てられたグローバルIPアドレスを使用し、そのIPアドレスは一定期間で変更されると前述しました。
ただ、その仕組みでインターネットに接続するのは都合が悪いケースもあります。
今読んでいただいているこのブログの様な「Webサイト」だったり、GoogleやYahooなどが提供している「Webサービス」などは、IPアドレスは固定されていないと困ります。
IPアドレスは「インターネット上の住所」になります。
その「住所」がコロコロ変わってしまっては、ユーザーはその住所を見つけられません。
インターネットでは、IPアドレスとドメインを紐付けて使用
前述したグローバルIPアドレスを取得してWebサーバーなどに割り当てる事で、インターネット上でサービスを提供できることは説明しましたが、IPアドレスは数字の組み合わせの為、人間には識別し辛く、例えば、YahooのWebサイトのアドレスは「182.22.25.252」だよと教えられても覚えられません。
そこで、人間が直感的にWebサービスの提供元の住所を判別しやすい様に、グローバルIPアドレスに対して「名前」を割り当てることを出来るようにして、インターネットにおける住所の表記は、グローバルIPアドレスではなく、インターネット用の名前を使うようにしました。
前述したYahooであれば、Yahooジャパンの場合は
yahoo.co.jp
と云うドメインを使用します。
Googleであれば、google.com などがドメインです。
当ブログであれば、depthbomb.net がドメインです。
ドメインのドットで区切られた一番右側を「トップレベルドメイン」と呼びます。
google.com の「.com」や、depthbomb.net の「.net」がトップレベルドメインです。
また、yahoo.co.jp の co.jp は、.jp という「国別コードトップレベルドメイン」に対して、.co という企業属性が付与された、「属性型jpドメイン」と呼ばれます。
属性型jpドメインは取得に厳格な審査があり、簡単には取得できません。
サブドメインの紹介とURLの仕組み
当ブログにブラウザでアクセスするには、ブラウザのURL入力欄に以下の様に入力します。
ドメインであるdepthbomb.netの前に、www と表示されています。
これは、「サブドメイン」です。
ドメインの先頭に対して、ドットで区切って、別の文字列を付与する事で、サブドメインごとに別のIPアドレスを割り当てるといった使い方ができます。
この「サブドメイン」で命名する文字列は、ドメインの所有者が自由に作成することができます。
因みに、当ブログで使用しているサブドメインの「www」は、「World Wide Web」の略称で、Webサイトで使用するサブドメインでは、慣例的に使用されます。
ただ、サブドメインは前述したように自由に指定することができる仕組みであり、wwwではなくても良いですし、そもそもサブドメイン自体を使わなくても問題はありません。
また、サブドメインの前には https:// と記述されています。
これは、サブドメインを含んだドメインの住所にアクセスする際に使用する「プロトコル」を指定しています。
WebサイトからWebページを取得する際には「http」と呼ばれるプロトコル(通信時の手順やルール)を使用します。
当ブログでは、アクセスしにくるパソコンやスマートフォンなどの端末とWebサイト間の通信を暗号化するなどのセキュリティ対策を施しており、そういったセキュアなWeb通信では、前述した「http」ではなく、「https」が使われます。
当ブログのURLでも、https:// で始まっております。
メールアドレスの仕組み
最近ではSNSやメッセンジャーアプリの普及により、個人でEメールを使う機会は随分減ってきましたが、企業間での連絡や、システムアカウントの連絡先としては、まだまだ「Eメール(以降メールと呼称)」が主流です。
さて、このメールですが、メールアドレスは以下の様な体系で構成されています。
必ず @(アット)で区切られています。
この区切りの前後の意味は以下の様になっています。
@より前 :メールサーバー内のユーザー名
このドメイン部分はサブドメインも使用できます。
また、メールサーバーのユーザー名は、例えば前述のsample@gmail.comの場合、「gmail.com」というドメインで登録されたGoogleのメールサーバーがあり、そのGoogleのメールサーバーのユーザーとして「sample」が存在するということです。
最後に
今回は、「インターネットに繋がる仕組み」という題材を元に、物理的なインターネット回線の仕組みや、IPアドレスやドメインといったインターネットの世界では欠かせない知識をざっくりと紹介させて頂きました。
今回紹介した内容はIT技術者であれば必ず知っておいて欲しい知識ですし、ITとは関係のないお仕事をされている人であっても、知っておいて損は無いものです。
皆さんの身近なインターネットは、様々な設備や高度な技術に支えられて提供されている事を、今回の記事で感じてもらえたら幸いです。
今回も読んで頂きましてありがとうございました。